(前回の続き)
高橋:「企業側の表現」と「学生側の期待」の間にギャップが起きていると指摘されていました。詳しく教えてください。
眞鍋:先日、社長が集まる会で話をする機会があり、そこで改めて気付いたことですが、中小企業や地元の企業はいい学生を採用したいと必死になっています。「給料を上げる」「休みを増やす」「福利厚生」や「女性にとって働きやすい」といった制度設計をしている。ところが、もちろんそれらも大事なんですが学生はもっと内面を重視してきている印象があるということです。
高橋:例えば?
眞鍋:「自分がその企業で成長できるだろうか?」とか「社長の事業に対するビジョンや理念は?」「社会に対する問題意識はどうなんだろうか?」など、会社の表面的な制度より内面の特徴について気にし始めていると思います。
高橋:それなのに企業は「女性が活躍できる」「残業が少ない」といった制度設計にばかり目を向けている場合が多いと?
眞鍋:そうです。それはそれで大事なことですが、そこでは不十分だということです。その一方で、「女性が働きやすい会社に就職します」など表面的なマッチングを意識する学生が多いというのも事実。ただ、中長期的に考えるとそういった学生は就職後にギャップを感じることが多い。企業経営からしても離職が早くなったり、ロスに繋がります。
高橋:逆に理念共感やビジョンに共感している学生は離職率も低いと?
眞鍋:そうですね。今、北九州市立大学の地域創生学群で長期インターンシップをやっていますがが、その学生の多くが、企業の理念やビジョンを見ています。そのような学生たちは就職後も離職が少ない傾向があると感じます。
高橋:地方の中小企業がどうやって学生と出会い、採用活動に成功していくのかが地方のテーマになりつつありますが、同じベクトルの延長線上で解決が可能なのでしょうか?
眞鍋:私は同じだと思います。むしろ地域の中小企業でないとできないことだと思います。荒い言い方をするとアルバイトでもいいので、ずっと関わることです。一定期間関わり続けて、社員や社長との対話を日常的に蓄積した上で、その企業にやりがいを見出したり、社長に「付いていきたい」と思うようになるケースが多い。大学の中でも長期で企業に関わる機会を地元の中小企業と作ることが今後のポイントになると思います。
高橋:北九州市立大学では、今年既に10人の学生を長期インターンに送り出していると伺いました。
眞鍋:今年で3年目になります。学生は5ヵ月、週3~4回で勤務をしています。
高橋:単位も出ているんですか?
眞鍋:はい。必修科目の1つです。長期インターンシップだけでなく、起業プログラムに挑戦する学生もいる。
高橋:大学から企業に送られているインターンシップの依頼は10~14日間のものが多い中で、5ヵ月間もの長期インターンシップに北九州市立大学が先進的に取り組む理由は何ですか?
眞鍋:1つは、市立大学なので地元(北九州市)の企業の役に立つのがミッションである。地元の中小企業は採用に困っているのでお役に立てるスキームを構築できないかと思っています。もう1つは、学生が将来の進路を選ぶ時にリアリティを持って納得して選んで欲しいと思ってのことです。「1dayインターンシップ」や「シューカツ」で選んだものではなく、お互いに相互理解した上で就職して欲しいと。この2つの想いで始めました。
高橋:実際に、深い相互理解の上で就職する実例も増えているのでしょうか?
眞鍋:ええ、実際に深い相互理解の上で内定を頂いて就職する学生も出てきています。
高橋:長期間のアルバイトやインターンシップをする学生が通常選考と別ルートで採用されるケースも出てきているのでしょうか?例えば、人事部長や社長から学生個人に内定を出すケースとか?
眞鍋:出てきています。5ヵ月も働いていたら、学生も企業もお互いにいいところも課題・問題点も分かります。そういう中で相思相愛のマッチングは非常にいいことだと思います。