内定をもらうのは本来は嬉しいはずのこと。ですが、
「第一志望企業の結果がわかる前に、他の企業から内定が出ちゃった…」
「内定は嬉しいけどまだ入社は決められない。他の企業も見てみたい。」
…と、内定の承諾を迷ってしまうこともあるかと思います。
就職は人生の一大イベント。迷うこと自体は悪いことではありません。どの企業が自分に合っているのか?自分自身としっかり向き合い、スッキリした気持ちで入社するために、一度もらった内定をトラブルなく保留する方法について見ていきましょう。
内定保留とは、企業からの内定通知後に内定を承諾するかどうかの意思決定を待ってもらうことです。
内定通知から内定承諾書を提出するまでの期限は、企業や時期にもよりますが大体一週間ほどです。この間に内定承諾を決められない場合に、内定保留をします。
では、そもそも内定保留はしてもいいのでしょうか?
結論から言うと、できます。
企業側としても内定を承諾した後、12月や年明けなどのギリギリになって内定辞退という形になってしまうのは困ってしまいます。それよりも、内定を承諾する前にしっかりと考えて「他の企業と比較・検討させていただきました結果、御社に決めます。」と確信を持って内定を承諾してくれた方が都合がいいものです。
「内定をもらったからすぐ承諾しなきゃ!」と、とりあえず受けてしまうのでなく、きちんと自分と企業の将来を考えた選択をしましょう。
いくら内定保留が許されるからといっても、理由もなく返事を待ってもらうことは許されません。どうして保留する必要があるのか、いつでも企業に説明できるようにしておきましょう。
この理由が最も多いと思います。就職活動で複数の企業の選考を受けるのは当たり前のことです。となると、第一希望の選考状況次第では他社の内定を断ったり、保留する必要が出てくるというわけですね。
一度に複数の企業から内定が出たけれど、内定承諾までの期間内にどの企業に入社したいのか決断できない、という状態のことです。
選考が進むにつれて、今までノーマークだった企業の魅力的な面が見えてきて、入社を迷うということも少なくありません。
第一志望の企業から内定をもらったけど、いざ承諾する時になると何かしらの不安も出てくるものです。就職は人生の中でも大きな決断のひとつです。結婚式の前に「本当にこの人でよかったのだろうか…」と不安になる、マリッジブルーと同じ状態になってしまうのは、しょうがないことです。
今、自分が感じている漠然とした不安が一体何からくる不安なのか? そもそも自分は一体何が不安なのか?
不安にしっかり向き合うことで、本当にしたいことが見えてくるかもしれません。内定が出た段階というのは、自分と向き合ういいタイミングなのかもしれません。
内定保留はできると言いましたが、リスクもあります。学生側が内定承諾を悩むのと同じように、企業側も一大決心をして内定を出しているのです。その内定を「承諾するか悩みます」と言われれば、企業もいい気持ちがしないのは当然のことです。
面接の段階では「内定をいただけたら御社に入社を決めます」と言っていたのに内定保留をすることで、企業はどう感じるでしょうか。
「もしかしたら志望度が低かったのかも?」「どこにでも同じことを言っているのでは?」と思われてしまう可能性もあります。
一番の不安は「内定が取り消されるかもしれない」だと思います。「内定が取り消されるくらいなら、保留せずとりあえず承諾したのに・・・」と、後悔はしたくありませんよね。
実際のところ、内定保留により内定が取り消されるかどうかは、企業によって違うとしか言いようがありません。
しかし、学生にはきちんと決断をして入社してほしいと考えている企業がほとんどです。「せっかく出した内定を保留するなんて!」と言って、即座に内定を取り消す企業はほぼないはずです。
オワハラとは『就活終われハラスメント』のことです。内定通知後の就活を辞めるように圧力をかけてくることです。2015年の流行語大賞にノミネートされたことで、一気に知名度が上がりました。
具体的には「内定を出したんだから今後一切就活はしないでね」と言って、就活を終わらせようとしてくるものが多いようです。また「今すぐ他にもらっている内定を辞退したら、内定を出してあげる」と就活を終わらせることと引き換えに内定を出す企業もあります。
そのほかにも「内定辞退するなら、今後は君の大学から二度と内定者を出さない」といった脅迫じみたものや「良いものを食べさせてあげた(いいお土産を渡した)んだから、ウチに絶対来てくれるよね」と見返りを求め、罪悪感を利用するものもオワハラに当たります。
では、オワハラにあってしまったらどうすればいいのでしょうか?
最終面接の段階でオワハラめいたことを言われたら、そこで決断せずに一度冷静になって考えるようにしましょう。
「面接の緊張により、今は決断できないのでまたご連絡します。」
「家族と話し合ってからまたご連絡します。」など、
相手の要求を受け止めるだけにして、決してその場で要求を受け入れないようにしましょう。
また、メールや電話でオワハラを受けたときは、大学の学生課やキャリア支援課、家族に相談しましょう。自分だけで判断・対処をするのではなく、第三者の視点から冷静に見てもらうと良いです。
学生に対して強気な姿勢を見せる企業は、入社後さらにエスカレートして、パワハラなどに発展する可能性が高いようです。オワハラをされる=ブラック企業ではないですが、内定が出た段階で改めて、企業について調べておくとベストです。
オワハラにあっても、内定を承諾するか辞退するかは、あなた自身が決めることです。入社するかどうかもあなただけが決められることなので、企業の強気な姿勢に負けないよう満足のいく決断をしてくださいね。
これまでは、内定保留したい学生の視点で見てきました。次は、内定保留された企業側の視点で考えてみましょう。企業側の考えを知っておくことで、失礼のない対応ができるようになります。
学生から内定保留をされたら、企業側はまず「どうして?」と疑問が浮かぶでしょう。最終面接まで来てくれて、きちんと受け答えをしてくれたのだからてっきり内定を承諾してくれるものと思っていたはずです。
なぜ内定保留をするのか?この理由が最も重要で、企業が一番知りたいことです。
次に「学生が内定を保留したいということは、何か不安な点があるんだろうか」と企業側は考えます。何度かの面接では拭いきれなかった不安や聞けないことがあったかもしれないと思うでしょう。
内定保留の連絡をする際には、上記の理由と不安に感じていることを踏まえて伝えるようにすると、企業が感じている疑問や懸念を払拭することができます。
ここからは、内定保留の仕方を例文とともに見ていきましょう。
内定保留というのは、一概にネガティブなものと捉えられるものではありません。 企業もあなたも気持ち良く入社を迎えられるように、内定保留のルールとマナーを見ていきましょう。
「今すぐ決められないから」と慌てて電話をして、内定保留を伝えてしまうのは、あまりいい方法とはいえません。連絡をする前に、以下のことをしっかりと考え、準備しておきましょう。
なぜ内定を保留したいのか、あなた自身がしっかり把握していないと企業には伝えられません。うまく伝えられないことで、企業側が「もしかして内定辞退したいのかな」と勘違いしてしまうことも考えられます。
トヨタ式『なぜなぜ分析』というものがあります。これは、「なぜ?」を5回繰り返し問いかければ、物事の本質に行き着くという考え方です。これにならって「なぜ内定保留したいのか?」と自分自身に繰り返し問いかけてみましょう。そうすることで、それまで表面的にしか見えていなかった理由の本質にたどり着くといわれています。また、一度紙に書き出してみるのもいいかもしれません。
内定保留の理由は、本当のことを伝えましょう。
「第一志望の企業の選考がまだ終わっていないから」
「多くの内定をもらって、どこにするかまだ決断しきれていないから」
「本当に自分がやりたいことがわからなくなった。進学も視野に入れている」
「ここで内定承諾するのは不安がある」
上記は、すべて間違った理由ではありません。あなたがきちんと自分自身の将来を見つめて出てきた理由なら、それを正直に伝えていいのです。
また、企業に対して不安があったり、聞きたいことがあったら、まとめておきましょう。内定保留の連絡をする際に「実はこういう不安があって」と切り出して質問をすれば、企業も快く対応してくれるはずです。
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保留した内定の返事をいつまでにするのかは、自分で決めることです。第一志望企業の結果が出るのが1ヶ月先なら、そこまで待ってもらえるか交渉する必要があります。
内定が出た時期によって返事を待ってもらう期限の目安をまとめましたので、参考にしてみてください。
日本経済団体連合会(以降経団連)が出している規定「採用選考に関する指針」によると、選考が始まるのは大学4年生の6月からです。しかし、企業の中には大学3年時から選考をスタートさせ、早期に内定を出す企業もあるようです。
もし3年生で内定が出てしまった場合、他の企業の選考がある程度進んでから返事をするのであれば、大学4年の5~6月ごろまで待ってもらう必要があります。
企業側も早期の内定通知だとわかっているはずなので、自分の就活が落ち着く時期を見極めて内定保留のお願いをしましょう。
3月から説明会を兼ねた選考を始める企業では、ちらほらと内定が出てくる時期です。しかし、この段階であっても経団連の規定よりも早期になります。大手企業などは6月選考解禁を守っているところもあるので、その結果を待つなら4ヶ月ほど待ってもらう必要があります。
選考の結果を待ちたい企業がある場合は、再度保留の時期を伸ばさないでいいように、いつぐらいに結果がわかるのか確認しておきましょう。説明会の時点で「内定はいつごろ出ますか?」と聞いておくのがいいですね。
大手企業は、10月の内定式に向けて内定者を出していきます。そのため、大手はその他の企業より内定出しが遅い傾向があるといえます。一方大手企業以外の企業では、内定が出揃う時期ですので、1~2週間先の返事で良いでしょう。しかし、他に選考を受けている企業の結果がわかるのが1ヶ月先なら、それまで待ってもらえるよう交渉しましょう。
一番良くないのは内定通知を放っておき、気づいたら返事の期限が切れていたということです。選考や内定が出るスケジュールを、逐一、確認しておくようにしましょう。
秋になると内定式が始まります。企業は内定者リストを作り、内定者を招待しなくてはなりません。そこで内定通知があった時に内定式の予定を確認して、自分の選考スケジュールと照らし合わせながら期限を設けましょう。
内定式は10月1日以降行われることが多いようです。なるべくなら、9月末までに返事をしておくようにしましょう。
そもそも選考をする企業がぐっと減ります。10月までに内定辞退者が出て追加で選考をする企業などが、秋採用を始めます。
あなたが内定を保留している間に、次点で内定を出せた学生がいるかもしれないことを覚えておきましょう。返事を先延ばしにすることは、企業にとっても他の就活生にもメリットはありません。一週間以内に期限を設定するなど、なるべく早く返事をするようにしましょう。
内定保留を伝える方法には、電話とメールがあります。どちらかではなく、電話とメール両方で伝えるのがいいでしょう。
内定保留を決めたら、すぐに連絡しましょう。迷っている間に、気がついたら返事を出すのを忘れていたとなったら、もったいないですよね。また、企業側も期間中に返事が来ると思って準備しているので、内定保留する場合はなるべく早く連絡しましょう。
社会人同士の場合、メールを送った後に「きちんと届いていますか?」と確認の電話をすることが多いです。何かをお願いする時は、メールと電話はセットだと考えましょう。
以下に、電話をする前に送るメールの例文を記載しておきます。
(例文)
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XX株式会社
人事部 OO様
お世話になっております。
ΔΔ大学文学部人文学科 4回生の氏名です。
先日は採用試験のお時間をいただき、ありがとうございました。
また、内定通知をいただきましたことも、重ねて感謝申し上げます。
この度、内定のお返事の期限について
ご相談させていただきたいことがありましてご連絡差し上げました。
つきましては、お電話にてお話したく思いますので、
金子様のお手すきの時間をお教えいただけますでしょうか。
それでは、よろしくお願い致します。
ΔΔ大学文学部人文学科 氏名
————–
メールで電話のアポイントが取れたら、決められた時間に電話をしましょう。
大切なのは、内定保留したい理由を正直に明確に述べることです。相手は社会人なので、緊張してしまうかもしれませんが、電話口ではハキハキとした受け答えをしましょう。話を聞いてあげようと相手に思わせる話し方・内容を、自分なりに考えておくといいでしょう。
(例)
————–
こんにちは。ΔΔ大学4回生の氏名です。
【相談のお礼】相談のお時間を取っていただきありがとうございます。
【用件】メールでもお伝えしましたように、内定のお返事の期限についてご相談したいことがあります。実は、内定のお返事をする期限を延ばしていただきたいと考えております。
【内定保留の理由】理由は、他の企業が選考途中であるためです。企業の選考を途中で辞退するという、中途半端なことをしたくないという気持ちがあり、すべてを終えてから決断したいと考えております。
【期限の提示】内定通知のお返事は、2週間後の◯日までにいたしますので、それまでお待ちいただけますでしょうか。
【お礼】(相手の返事を待ってから)ご検討いただき、ありがとうございます。またご連絡いたしますのでよろしくお願いいたします。
それでは、失礼いたします。
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電話で伝えるコツは、以下の2点です。
・何を話そうとしているのかを最初に伝える
・内定保留したい理由を明確に伝える
考えながら話してしまうと、ついダラダラと長い文章になってしまい、「結局何が言いたいのだろう?本当の理由はなんなの?」と思わせてしまうので、短い文章で簡潔に伝えるようにしましょう。
電話は相手がいて成り立つものなので、相手の相槌を打つタイミングを作ってあげることも大切です。トークスクリプトを読み上げているだけでは、内定を保留してほしい気持ちが伝わりません。
内定を承諾すると決断した場合は、すぐに連絡しましょう。内定保留を快諾してくれたことに、お礼を述べることも忘れてはなりません。
残念ながら内定を辞退する場合も、速やかに連絡しましょう。どうせ辞退するんだから連絡しなくてもいいやと、放置しているのは絶対にNGです。
「内定承諾書がない=内定が成立していない」わけではありません。辞退をしなければ、企業はずっと連絡を待っています。 内定を保留した時の理由を思い出し、なぜ辞退するのか、正直に伝えましょう。
この記事に挙げたメールや電話の例は、あくまでも一例です。大切なのは、あなたの気持ちがきちんと伝わることです。自分なりに考え、分析し、内定保留を伝えましょう。
内定を保留することは悪いことではありません。納得のいくまで考えると同時に、企業にも失礼のない対応をするようにしたいものですね。