会社名 | 立花高校 |
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代表者 | 校長 齋藤 眞人 |
所在地 | 福岡県福岡市東区和白丘2丁目24−43 |
事業内容 | 高等学校 |
従業員 | 70名 |
公式サイト | tachibanahs.net |
不登校や引きこもりの子どもたちへの支援を行う学校として有名な私立・立花高等学校。同校では、在校生の70%以上が、かつて、いじめや、病気、障がいなどをきっかけに不登校や引きこもりを経験した生徒たちであり、そうした学校生活の軌道から逸れてしまった生徒たちに、再起のきっかけをもたらす学校として、創設以来50年以上、この地に根付いてきました。その根幹をなすのが、「目の前の生徒を、ありのまま受け容れる・認める」という精神です。
今回の取材では、毎年5月に行われる立花高校の運動会「新花祭」に密着しました。立花高校では、先生が生徒に上から指示や命令を与えるのではなく、生徒のやる気・自発性を伸ばすことに徹底して重きを置いています。この日の運動のメニューも生徒自身が考え、先生たちはそれをサポートする役目に徹していました。
実行委員長の生徒:「自分で考えて、先生に相談してOKが出たらほとんど生徒中心で行います。中学校・小学校は先生が指示を出してきちんとしなきゃいけないという命令感があったのですが、立花高校は自由で、校長先生も『自由にしていいよ』と言ってくれて。そこがいいです。すっごく楽しいです。」
生徒の中には、この新花祭で、数年ぶりに運動会に参加するという子も少なくないそうです。「生徒の長所を見つける・認める・やりたいことを応援する」そうした、立花高校のアプローチによって、心を閉ざしていた生徒たちが、自分の中に眠っていた力を開花させ始めるといいます。
生徒に話を聞きました。
「小学校6年生から学校に行けなくなってしまって、中学校は頑張ろうと思ったら嫌な先生に当たってしまって、そこからずっと学校に行けなくなって・・・。高校進学も単位や卒業日数が足りなくてどうしようかなと思っていたところに、立花高校に出会いました。ここでは同じ境遇の仲間たちがいます。いつも校長先生が言ってくれるのは『ゆっくりでも良い。ゆっくりゆっくり、一歩一歩進んでたまにはバックして後ろに下がればいい』と。」
「小学校4年生の時から『ウエディングプランナーになりたい』という夢がありました。でも中学校で不登校になった時に『ああ、もうなれないだろうな』と思っていました。でもこの高校に入った時に『私もここでなら夢を叶えられる。自分の夢を叶えられる1歩を歩みだせる』と思えました。」
保護者にも話を聞かせて頂きました。
「小学校の時に子供は発達障害や学習障害も少し持っていることが分かって、学校にとっても、どう扱ったらいいんだろうという難しさは確かにあったと思います。立花高校に来てからは本当に『ここにいて良いんだ』『歓迎されているんだ』と思えるようになったこと、そういう居場所が見つけられたことにとても安心しています。」
立花高校の生徒や卒業生の中には、本人や先生も予期していなかったほどの才能を開花させる人もいるようです。グラウンドの片隅で中国舞術を練習している卒業生の高取さん。高取さんは、高校時代に中国舞術に魅せられ、それを仕事にしたいという夢を掲げて、見事に叶えました。現在、福岡市を拠点に全国を巡業する「黒竜舞術団」の団長として活躍しています。
高取さんに話を伺いました。
「入学前は気弱で主張ができない子どもでしたが、高校1年生の時に来日した中国の演劇を見て『とにかくこれがしたい』と思って。好奇心の浮き沈みが激しいので、やりたくないものをやりたくない時にさせられるのは苦痛でした。自分の朝起きるタイミングや、学校に行くタイミング、勉強するタイミングは小・中学校は全部決まっていますが、立花高校では一人一人のタイミングに合わせてくれるので、自分のやりたいことをやりたいタイミングでさせてもらいました。今おかげ様で仕事として食べて行けているのでありがたいです。」
2015年、不登校問題を重く見た文部科学省は、「不登校に関する調査研究協力者会議」を発足させ、有識者を集めて打開策の協議を始めました。その委員の1人であり、角川グループの角川歴彦会長は、立花高校の取り組みに高い関心を寄せています。
角川グループ・角川会長:「立花高校は先生が生徒に寄り添っているんですよね。この生徒が何をやっているのかを先生は知っている。そのことひとつが普通高校では充分ではないわけです。不登校生徒の親御さんに話を聞くと、『卒業証書なんかいらない』と言うんですよ。子供が喜んで学校に行っている姿が見たいと。学校に対するニーズが変わってきています。それを補おうとしているのが立花高校。これは貴重ですよね。荒野に咲いたバラ一輪という感じです。今の学校教育の中で、立花高校の存在が光ってくることを期待したいです。」
また、東証一部上場企業、総合メディカル株式会社の創業者である小山田浩定相談役も、立花高校の取り組みを、社会的に意義が大きいと評価する1人です。
総合メディカル・小山田相談役:「本当に嬉しくなりますよね。こういう学校があるというのは。教育の原点みたいなものはこれだよねということを教えてくれます。普通の学校が排除している『ここからは駄目よ』と。そういう方々を集めて活かしておられる。すごい学校だと思います。」
引きこもりや不登校の生徒のセーフティーネットとして存在感を放つ立花高校。一方で、全国には同じ悩みを抱える生徒や保護者が大勢います。他の地域からも立花高校のような存在が必要だと切望する声も多く寄せられています。立花高校の齋藤校長はそうした声に対して、このように語ります。
立花高校・齋藤校長:「福岡でウチが一校あるだけで、今500人の子どもがなんとか将来に繋がっています。熊本や鹿児島の方がよくおっしゃるのは、『分校を作ってください』『鹿児島にも立花が欲しい』と。でもそれはウチじゃなくていいいじゃないですか。他校でそういう志を持った方が子どもの居場所を作ってくれるのであれば。日本全国にもっと受け容れる場所が広がってほしいと願っています。」
最後に齋藤校長に社会へ届けたいメッセージを伺いました。
「できないことばかりを言うのではなくて、できていることを認め合おうというのが究極のメッセージです。できていないことを、もちろんできるようにしていきたい。でもその根底に、既にできていることをもっと認め合う。それを甘いと断じられたら、『すみません』と言うしかないんですが、頑張っていない人なんていないですよ。ウチの子たちだけを美化しようとは全く思っていないです。社会に生きる方々全体がもっと認められていい。『よく頑張っていますね』と言われている人が果たしてどれだけいるのかなと。『もっと頑張らんと、もっと頑張らんと』と思っている方が大半だと思うんですよね。だからどの方に限らず、『お互いよう頑張ってますよね』ともっと言っていいじゃないですか。肩身の狭い思いをしている方々に光を当てようとしているのではなく、社会全体だと思いますよ、光が必要なのは。この子たちに光を当てるんじゃなくて、この子たちを社会の光にしていきたいですね。」