北九州市立大学 / 眞鍋和博教授(地域創生学群長)
高橋康徳(以下、高橋):眞鍋先生、今日はよろしくお願いします。
眞鍋和博教授(以下、眞鍋):こちらこそよろしくお願いします。
高橋:眞鍋先生は「就職活動において企業側と学生側の考えにギャップがある」と
ご指摘されていました「非日常就活」とは何なのか教えてください。
眞鍋:今の「シューカツ(編集部注:眞鍋教授は最近の学生の就職活動の風潮を総称してカタカナで「シューカツ」と表現している)」が明らかに「非日常的な活動」である一方で、内定が出て就職すると、4月1日からいきなり日常が始まる。この「非日常の就活」と「日常の働く」の差がありすぎるということです。
高橋:その差が問題を引き起こしていると?
眞鍋:離職、ミスマッチ、精神的な苦しさ・・・、様々な問題の原因の1つになっていると思います。
高橋:「非日常の就活」をもう少し詳しく教えて下さい。
眞鍋:例えば、1dayインターンシップです。一見すると会社の疑似体験だが、それはあくまで疑似体験に過ぎない。学生のために作られたプログラムを体験することで、学生は企業を理解したつもりになる。しかし企業の日常的な活動にはそういった(プログラムにあったような)動きはなかったり。
一方で企業は、学生のために「作られた状態」を体験させることが採用活動になっている。学生はそのプログラムを見て、魅力を感じて、説明会に申し込み、1~2dayのインターンに参加して、その企業と仕事を分かったつもりになっている。そういった学生がまだ非常に多い。
高橋:「分かったつもり」が、その後に「こんなはずじゃなかった」を引き起こしているんでしょうか?
眞鍋:統計を取るのは難しいですが、何らかの原因になっていると思います。卒業して働きだした学生と話す機会も多いんですが「こんなはずじゃなかった」と言う人が非常に多いです。しかも、意外と就活時代に積極的だった人だったりする。
高橋:就職活動時代に「優秀」とされた学生が「こんなはずじゃなかった」と言っていると?
眞鍋:自己分析、企業研究、自己PRの練習、面接の練習など大学側も支援の場をたくさん作っています。そうした場に積極的に参加している人が就職先でギャップに悩んでいる場合が多い。つまり、大学の方も「作られた就職活動支援」になってしまっているんです。
高橋:どうすればギャップは埋まるのでしょうか?
眞鍋:難しいですが、1つの解決策のヒントとしては「長期間、企業の日常に関わる経験」をする必要があると感じています。長期インターンシップです。
高橋:なるほど。1dayや2dayではなく、中長期にわたって企業内で実際に活動して現実を見ると?
眞鍋:良いところも悪いところも両方見て、納得した上での就職を目指す。長期インターンシップをしている女子学生が面白いことを言っていました。休み時間の給湯室での会話から「働きがい」「社員がどれだけその会社を好きか」が分かると言うのです。ある企業では悪口ばかり、別の企業では辛い話はするけれども前向きだったりと。そういった微妙な違いを学生が感じているのは面白い視点だと思いました。日常を体験しないと絶対にそういうことは分からない。
高橋:学生は、社員のオフタイムの場所も見ていると。
眞鍋:そういう所(仕事以外の場面)で、社員がいかに仕事・自分・社会のことを考えているのかがすごく気になりますと彼女は言っていました。就活に積極的な学生は多いが、長期インターンに積極的な学生はまだ少ない。その気運をどうやって高めていくのかが今後の課題だと思います。
高橋:リクルートスーツを着て、皆と同じことをするのが就職活動ではないというメッセージを感じますね。